porta 2018 #029
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 「はじめは不安でしたが、今ではみなさんの仕事ぶりをすっかり信頼しています」という小林さん。約2年前からは有償ボランティアになり、メンバーが収入を得られるようになった。 「営業が営業に専念できることで、確実に営業成果が上がっているだけではなく、商談中に洗車するみなさんを見かけた人から『あの人たちはなに?』と聞かれ、説明すると『それは素晴らしい』と褒められることが多々あります。さらに、この活動が知られることで、認知症に関する講演に呼ばれることが多くなったのですが、その会場でメンバーの奥様から『以前は思うようにならない暮らしにイラついていた主人が、ホンダさんで仕事をするようになって、とても朗らかになって前向きになりました』と声をかけられ、とても喜んでいただいていることを実感しました。人間にとって『働くこと』『社会の役に立つこと』が何 「Honda Cars 東京中央 町田東店」と「DAYS BLG!」の出会いは、4年前にさかのぼる。顧客でもあった「DAYS BLG!」代表・前田隆行さんから、担当営業の小林さんに「メンバーに仕事をください」と打診があったという。当時の支店長に相談したものの門前払い。小林さん自身も、まだ認知症の方への知識がなかったことから、車を傷つけられたらどうしよう、勝手にいなくなったら…との不安があり、実現は難しいと思っていたという。ところが何度断られても打診を続ける前田さん。ファーストコンタクトから1年半後、その熱意に打たれた支店長、小林さんと「DAYS BLG!」メンバーとの面談が実現した。「実は面談の最後まで、支店長は認知症の当事者と話をしていることに気付かなかったんです」と小林さん。そこでまずは無償ボランティアという形で洗車やダイレクトメールの袋詰めなどの依頼をスタートした。 よりの薬なんですね」 こうした成果が評判となり、2017年から鶴川店でも週1回「DAYS BLG!」の有償ボランティアがスタートしたという。 「認知症の方が社会で活躍するお手伝いをすることで、私たちの仕事が助かるはもちろん、メンバー自身にも、その家族にも役立つ。さらには社会全体の理解も深まる。とてもいい関係が築けています」車体をピカピカにしたあとは、小型掃除機を使って車内の細かなゴミも見逃さず丁寧に清掃「DAYS BLG!」では近所の子どもたち向けに「駄菓子屋」を経営し、メンバーが仕入れから販売まで担当「DAYS BLG!」は『仕事がある』のが大きな特長」とスタッフの菅原真紀子さん車体に水をかけ、セーム革で拭き上げる。ほぼ毎日洗車しているのですぐにピカピカに長い道のりを経て有償ボランティアが実現家族からも喜ばれ社会的意義を実感 「有名無名にかかわらず、1枚1万円で販売します。この20年間で約1400万円を寄付してきました」。平均にして1回70万円。自画自賛していたら、「娘に、たったそれだけ? フェラーリも買えないじゃん」と言われたそうで「娘にはかなわない(笑)」。 2017年のチャリティー作品展は、12月8日から10日まで東京都品川区にある「MGG」(光村グラフィク・ギャラリー)で開催された。初日は開場前にすでに30人以上もの行列ができた。ちなみに内堀さんは3点の作品を出展し、すべて売れたのだそう。 内堀さんがもうひとつ、ライフワークとしている活動が「ランドセルは海を越えて」というボランティア。日本の子供たちの不用になったランドセルを全国から集め、中にノートや鉛筆、クレヨンを詰めて世界で最も物資が不足している国の一つアフガニスタンの子供たちに送る活動だ。こちらは14年目ですでに2万個以上がアフガンに渡っているという。内堀さんは集められたランドセルの山や港での梱包作業、コンテナへの積み込みをはじめ、到着して現地の子供たちがランドセルを受け取るところまでのすべてに付き添い、撮影して記録に収めている。その様子は著書に詳しい。 さらに2011年、大震災の年には年間100日間を福島で過ごし、口紅やホッチキスなどの生活物資を届けたり、被災者を勇気付ける写真展を開いたり、全国の小学校で講演をしたり…とほぼボランティア活動で1年が過ぎていく。「困っている人がいると、今の自分にできることを何でも行いたくなるんです」。本物の人格者だ、と思う。最初に感じたオーラは最後まで途絶えなかった。商売道具のカメラ機材を愛用の皮のバッグに詰めて。あまり多くの機材を持ち歩かないほうだとか何十カ国も旅をしたカメラバッグは体の一部のようなもの。これからも一緒に日本のランドセルがアフガニスタンの子供たちへ

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