porta 2018 #031
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る。「東急ハンズは社員の自主性を重んじる社風で、自由度があるところが魅力ですね。仕事においては、お客様のご要望通りの形に自転車が仕上がったときお客様の喜ぶ顔を見るとこの仕事をしていて良かったと思います。もっと自転車の魅力を伝えるために月2回のサイクリングを企画したい、という目標もあります。75歳くらいまでこのまま働くことができれば、もっとやりたいことができると思います」と意欲満々だ。 同社では定年を間近に迎え、仕事の方向性を見失っている人へのカウンセリングも行っている。「2015年に《いま未来サポート》というチームを発足しました。このチームは従業員すべての悩みに個別に寄り添って解決していくのが目標で、最後まで自分のスキルを磨き続け、輝いていてほしいという思いから発足しました。社員には自分の得意なことを再認識してもらい、それをさらに生かすきました。そうした先輩技術者への尊敬の気持ちを今度は若い人に繋いでいかなくてはいけないと思います」(余宮さん)。 マイスター社員の1人、瀧川博幸さん(67歳)は28年間サイクルショップで勤務後、退職。今は広島店のサイクルコーナーで、自転車の組み立て・整備や自転車の修理、自転車に関する様々なアドバイスを行っていにはどうしたらいいかを考えてもらう。たとえばある社員の場合、キッチンを担当していたときの自分がすごく輝けていたので、定年までにキッチンコーディネーターの資格をとって後輩にレクチャーしていきたいなど。つまり自分を高めていけばシニアの世界は明るいということをわかってほしいのです」(余宮さん)。現在定年後のシニアスタッフは65名。2020年には社員の1割がシニアスタッフになる。歳を重ねるほど輝ける環境、そしてシニアがリスペクトされ続けることが東急ハンズの大きな目標だ。定年前の5年間でスキルアップする努力をすれば、何歳になっても輝いて働けます(余宮さん)ネット販売が増える中、お客様と向き合い、ニーズに応えられるのがリアル店舗ならではの魅力※2018年6月1日付同僚と切磋琢磨できるハンズの仕事環境がとにかく楽しく、ここで自転車の仕事ができてとてもよかったです(瀧川博幸さん)努力次第でシニアの未来はもっと広がる年に誕生した長さ100メートルにもなる鯉のぼりだ。「100メートルもあるから、ジャンボジェット機より大きい。市役所の建物の長さと比べたりして、ここに顔があって、ここから尾ひれなどと考えながら描きましたね。難しいけれど挑戦が面白い」と、橋本さんは苦労を笑い飛ばす。 そんな橋本さんは現役職人を続けること50年。75歳の時に、惜しまれつつも店を閉めた。「年齢もあるし、そろそろ休もうかと思いましたが、今は現役時代にはできなかったことに、どんどん挑戦しています」 ゴールデンウィークにはスカイツリーで子供向けの鯉のぼり教室の講師を担当。37種類ある作品の中から、見本をいくつも作って、子供達に手描き鯉のぼりづくりを指導している。市の要請で手ぬぐいの原画も描いた。「現役時代はゴールデンウィークの頃は本当に忙しくて、イベントの講師なんてとても無理でしたが、新しい世界がまた広がったなあ、と思っています」 鯉のぼりは「龍に変わる前の鯉(登竜門伝説)」を元にしている。「目元に炎があって、一気に空へ登る姿を描きたい。その気持ちは今も同じ。鯉に恋して、一生離れられない。」 いいフレーズでしょと橋本さんはいちばんの笑顔を見せてくれた。「ジャンボ鯉のぼり」は現在4世。巨大なクレーンを使って空を泳ぐ姿は大迫力加須市が制作した「手ぬぐい」にも橋本さんの鯉のぼりの絵が使われている橋本さんがイベント用にひとつずつ丁寧に手描きで描いた小さな鯉のぼり。集大成の仕事にもなっている見本の鯉のぼりの中には、イベント会場であるスカイツリーやキャラクター「ソラカラちゃん」も登場東京スカイツリーで行われた「手描き鯉のぼりワークショップ」の様子。橋本さんの指導に子供達も注目写真提供/加須市写真提供/加須市

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