porta 2020 #038
16/16

text by駅弁女王日々の旅のなかで、今まで5000食以上の駅弁を食破。雑誌等に駅弁の連載、著書も多数。調製元と駅弁の開発も行う。旅行ジャーナリスト、フードアナリスト。Shinobu Kobayashi駅弁がつなぐ地域の絆こうばこがに令和2年12月15日発行 発行元:一般財団法人長寿社会開発センター 〒105-8446 東京都港区西新橋3-3-1 KDX西新橋ビル6F TEL03-5470-6753 FAX03-5470-6763カニの炊き込みご飯の上にたっぷりのったカニの棒身石川県加賀市「香箱蟹ごはんのかにすし」 11月。北陸に冬を告げるカニ漁が始まると、漁港の市場には競い合うようにゆで蟹の真っ赤な花が咲く。実に華やかだが、私の目指すのは店の隅、トロ箱に無造作に投げ入れられた香箱ガニだ。ズワイガニの雌で、甲羅は手のひらに収まる大きさ。内にプチプチした卵の外子とオレンジ色のねっとりした内子がたっぷり入っている。これをスプーンですくって食べると濃厚でいつまでも舌に残る旨み。いくつでも食べられそうだ。この香箱ガニの外子、内子、みそ、身を炊き込んだごはんの上に、近海で獲れた紅ズワイガニの棒身(足の部分)を山のように盛り付けたのが「香箱蟹ごはんのかにすし」。ふたを開けるとカニの香りがふわりと立ち上り、食欲をそそる。ショウガが少しのっているが、野菜の煮物や揚げ物など一切なしのカニ一本勝負。棒身はきしむような食感で、みずみずしい後味。そして香箱ガニが凝縮された炊き込みご飯は噛めば噛むほど香味が増幅されて、カニの味の本質を知ることができる。駅弁を包む掛け紙もまたレトロなデザインで印象に残る。価 格 :1480円(税込)    (9月~4月期間限定)販 売 :金沢駅、加賀温泉駅/石川県問合せ:☎0761-72-3311    (株式会社高野商店)加賀市棒身に隠れて見えないがカニ子と炊き込んだご飯が絶品手作業で子や身を分け、ほぐしていく殻に詰まった濃厚な内子や味噌にしゃぶりつく贅沢第38号

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る