porta 2020 #038
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工賃アップだけが指標なのではなく、働く喜びを感じてもらうことが大事なのです脱サラして、障がい者が働くチョコレート工房を設立 障がい者たちが働く福祉事業所として全国初のチョコレート工房が「ショコラボ」。その名前には2つの意味が込められている。1つめはショコラのラボラトリー(工房)。そしてもうひとつは、健常者・障がい者・パティシエなどの専門家とのコラボレーションという意味だ。8年前、伊藤さんがショコラボを立ち上げたのは、息子さんが障がい児として生まれてきたことがきっかけだった。誕生して3カ月後、医師から子どもに障がいがあることを告げられたのだ。 「現代医学では珍しい障がい事例、と告げられたときは今起きたことを咀嚼するのが精一杯で、冷静に考えることができませんでした。どんな障がいかわからない。それならまだ望みはある、でも長生きできるかどうかもわからない。どうすればいい?いろいろな思いが数日間頭を駆け巡っていました。悲観するとそっちの方向にひきずられてしまいそうなので、負の思考はやめなければ、と思い直し、医師との面談から4日後、前を向いて息子と明るく楽しく歩息子との時間を大切にするため銀行を退職横浜市郊外のビルの1階にあるチョコレート工房「ショコラボ」。銀行マンだった伊藤紀幸さんが、なぜ脱サラして工房を立ち上げたのか、その思いをうかがってきました。取材・文/富山閣子 撮影/清水知成純白の作業服を着た十数人の男女が働く工房。脇目もふらずひたすら作業している姿がなんとも凛々しい息子さんが3歳のときの七五三のお祝い。おじいちゃん、おばあちゃんも一緒に笑顔でひとつひとつ手作りだから、同じものを作らなくてもいい、というのがショコラボのこだわり。人間もそうでひとりひとり違っていい最初は不慣れな作業も徐々にできることが増え自信がついてくるイチゴ、リンゴなどのドライフルーツをチョコにディップしていく

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