porta 2020 #038
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 「発足のキッカケは、事務局長の矢野さんが馬込に嫁いで文士村について知ったものの、それが地域では風化しそうになっていることに疑問を持ったこと。このまま放っておくのはもったいないと。そこで近所の私などに声をかけ、7名でスタート。今は50名ほどの会員がいます」と理事長の井上さん。 「東京に『文士村』と呼ばれるところは阿佐ヶ谷や田端など4カ所ありますが、その中でも馬込文士村は文士と芸術家の数も領域の広さも群を抜いています。そして文士や芸術家たちがここで濃密なコミュニティーを築いていた。それだけこの地に魅力があったということなんです。そんな街の魅力を発掘するのも私たちの役割」という。そのため同会では文士や芸術家の足跡を紹介するだけではなく、地元の魅力と、文化遺産を保存し、伝えていくことにも力を注いでいる。その代表例が「尾﨑士郎記念館」と「瓢々祭」だ。尾﨑士郎が晩年を過ごした邸宅を有効活用するよう大田区に陳情し、記念館がオープン。人を集めることが好きだった尾﨑士郎を偲んで「瓢々祭」では賑やかにコンサートなどを催している。 「最終目的は、文化で街づくりをすること。新しい住宅も増えて、街のことを知らない人も多くなってきましたが、若い世代にも地元に愛着を持ってもらいたいんです」(井上さん) 馬込文士村を知ってもらい、地域の魅力を再発見し、地域活性化の推進力に。会の活動はより広く、多岐に広がっている。 取材同行した「ひととき散歩」は馬込文士村継承会の活動のほんの一例にすぎない。同会は2000年3月に発足以来、年平均6回の文化講演会で馬込文士村の作家、詩人、芸術家の人物像と作品を紹介。ほかにも2008年に大田区立尾﨑士郎記念館が誕生したことを機に、毎年5月か6月に「瓢々祭」を開催。伊豆や伊香保など文学ゆかりの地をめぐるバスツアーも人気だ。多彩な講演会、イベントで街の魅力を発信大田区馬込に住んでいた代表的な文人。昭和初期には文士・芸術家が100人近くもいたACDB講座だけではなく食文化を学ぶ「仲買人の賄い料理」なども開催「ワインを楽しもう会」「文士とワインの物語」などワイン企画も人気 毎年5月か6月に開催される「瓢々祭」。B「文士に捧げる抒情歌」で北原白秋の歌を披露。C大画面で馬込文士村の魅力を紹介。D第8回瓢々祭「人生劇場の口上」ABCD

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