porta 2022 #043
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取材・文/中林貴美子撮影/筒井聖子 京王線・仙川駅から商業エリアを抜けて徒歩8分ほど。小さな店が軒を連ねるマンションの1階にあるのが「ミシンカフェ&ラウンジnico」だ。洋服や帽子などが飾られた店内には、家庭用ミシンのほか、ロックミシン、カバーロックミシンなどがズラリと並ぶ。 「はじめは7台からスタートしたのですが、今ではカバーステッチミシン、刺しゅう用ミシンなど珍しいものも含めて42台になってしまいました」と話すのはオーナーで帽子作家の有希さん。 ここは定額制の会員やワークショップ参加者がミシンを使って洋服やバッグなどを作ることができるスペース。現在はコロナ禍のためお休みしているが、スタート当初は本格カレーなども味わえるカフェも併設していたという。 「母は15歳の頃から洋裁をしていて、自分の服はもちろん、私や妹の服を作ってくれていたんです。私も小さな頃から母と一緒に縫い物を楽しんでいて、大人になってからも、カフェなどの飲食店に勤務しながら休日は洋裁。『いつかミシンのあるカフェを開きたいね』と漠然と話をしていました」 そんな夢を実現するキッカケとなったのが東日本大震災だった。 「いつか、なんて言っているといつまでも出来ない。命のあるうちにやらなくちゃ、とすぐに物件を探し、自分たちで内装を整え、2011年9月にはこの店をオープンしました」と有希さん。 「洋裁は独学ですが、商社勤務の時も結婚してからも、58年、ずっと続けてきました。当時はまだ今のようなファストファッションがなく、洋服が高かったということもありますが、何より作ることが好きだったんですね」という君子さん。有希さんがこの店をオープンした当初、君子さんはミシンメーカーのミシンアドバイザー。会社勤務しながら、この店の洋裁アドバイザーとして参加し、定年後に本格的に運営に参加したという。好きと得意を活かしてセカンドライフを充実洋服や帽子、バッグや小物など、もの作りの好きな母娘が東日本大震災を機にミシンカフェ&ラウンジnicoをオープン。2人の夢が詰まった空間を訪ねました。 大きな作業台で布をカット。ニット素材が切りやすいロータリーカッターなどの用具も揃っているちょっとレトロな雰囲気の内装は君子さんと有希さんがコツコツ手作りしたものなかじま中嶌さんファミリーの家族写真。2人の子どもと自分のために手作りした服に思い出がいっぱい

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