porta 2023 #045
3/16

 小田急江ノ島線南林間駅から徒歩4分。住宅街の一角に柴田久美子さんが主催する国産小麦のパン作り教室がある。柴田さんは大手日用品メーカーを55歳で退社し、パン教室の先生へと転身した。 「会社員時代、特に40歳代の頃は、海外向け商品を開発するため海外出張も多く本当に忙しかった。それこそ、家事なんかほとんどできませんでした」と柴田さん。多忙な生活が一段落した50歳のとき、鎌倉の料理サロンに行ったことがその後の生活を考えるキッカケになったという。 「そこは料理教室というより一緒に美味しいご飯を食べる会のような素敵な雰囲気。私も定年後は、若い人たちが集まってグチを聞いてあげられる居場所を作れればいいなと思ったんです」。定年に向けていろいろな料理教室に通ううち 「はじめは全然思うように作れなに出会ったのがパン作りだった。かった。でも、だからこそ面白い。それからプロのシェフのレッスンに通うなど、どんどんのめり込みました。そして55歳の時、パン教室をすれば平日のシェフのレッスンにも通えるし、経費でいい道具も買えるのではないかと思いついたのです。先に退職していた先輩に相談したら『60歳まで待つのではなく、やりたいことはすぐやるべき』と力強いアドバイスをいただき、早期退職を決意しました」忙しすぎる会社生活から定年後を見据えて起業大手日用品メーカーの最前線で活躍しながら誰かの居場所、自分の居場所を作りたいとパン教室をオープンした柴田さん。小麦の芳香が漂う空間でお話を伺いました。この時に焼いたのはドイツパン。「今、ドイツのパンを勉強中です」これまで勉強してきたパンのレシピ本。柴田さんの尊敬するシェフの本も取材・文/中林貴美子教室で焼き上げたパンの一例。1回で2種類のパンを作る撮影/筒井聖子オーブンから出し焼き上がりをチェック。「小麦の種類によって、水の量や発酵時間を変えるんですよ」 

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る